ありがとう。
「俺が言っていいことかわかりませんけど、美喜のお見舞いにどうして来ないんですか?」
美喜のお母さんは俺の目を見つめる。
そして、何かを認めることを覚悟したように話し出した。
「家庭の事情・・・・と言いたいところだけれど、奏君には話しましょう。
美喜を失うのが---怖いの。」
「え?」
失うってどういうことだ?
「美喜は生まれた時からあんな体で、ずっと入退院を繰り返していたから、私たちはその度に見る美喜の姿を見るのが怖くてしょうがないの。」
一体、なんの話だ?
あんな体って? 入退院を繰り返していたって?
一体・・・
「美喜には申し訳ないって心から思っている。あんな体に産んでしまったことを、今でも後悔しているの。」
美喜は何を抱えているんだ?
「あの子が日に日にやつれて、苦しくむ姿を見たくないの!
それなのに、私たちのために無理して笑う姿も見たくない・・・・。
わかるでしょ?」
俺はわかってなかったんだ。
その後に続く美喜のお母さんの言葉はどれほど残酷なものかということを。