ありがとう。






特に東京に未練があったわけではないけど、どうせ死んでしまうのならどこでも同じじゃないって思っていた。





けど、その町で暮らしていたお母さんがある物語を聞かせてくれたの。



“願いの叶うレモンの向日葵”」






「聞いたことあるな。


この町の昔話だろ?その向日葵に願いを込めると叶うんだっけ?


この町が村だった頃の話だから、かなり前からある話だったと思うけど。」





「うん。その話は諦めていた私の心に唯一響いたものなの。



今の技術では、この病気は治らない。


その話だって、ただのおとぎ話にすぎないのかもしれない。



けれど、願わずにはいられなかった。



ほんの少しでも希望があるのなら、それに手を伸ばしてみようって思った。





だから、この町にきた。



結局、どんなに探しても向日葵は見つからなかったけれど


私はこの町で別の、求めたものよりも大切なものを手に入れられた。








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