ありがとう。
中西さんは一枚のメモを差し出した。
「本当は、絶対に教えないって約束したんだけどね。」
そう言った彼女は、声を震わせ静かに泣いていた。
その涙に気付かなかったのか、優しく微笑んで言った。
「いってらっしゃい。」
俺はメモをもらうと、その言葉に答えた。
「ありがとうございました。」
そして、俺たちはかつての美喜の過ごした病室をあとにした。
気のせいかもしれないが、やっぱり彼女は自分の涙に気付いていたのだろう。
何となく、そう思う自分がいた。