ありがとう。
《美喜side》




目を開けると、そこは知らない病室だった。




今朝、中西先生の病院を出てから、発作が起きたんだっけ。




酸素マスクのせいでくぐもる声を震わせ静かに一人言を言う。




「ずいぶん、生きたな。」



本当はもっと永かった余命は短くなっていることはわかる。




みんなに会えなくなるのが怖いけれど、幼いながら自分の死を覚悟した日から、もう何年も生きた。





恋なんかしないって思ってた。



奏君を好きになってからも、彼女にはならないって自分に誓った。




けれど、あなたのそばにいたいって気持ちが溢れた。




一年。



私たちの人生の中では短い期間だけど、あなたと恋が出来て良かったです。




奏君・・---







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