ありがとう。
「おとぎ話って何のこと?」
そう言ったのは、詩歌だった。
「そっか、詩歌は隣町に住んでるもんね。」
「私たちの町には昔から、ある話が伝えられているの。
愛しあった女の人が病気になって、男の人は自分の作ったレモン色の向日葵をプレゼントするんだけど、女の人は結局亡くなるの。そして、男の人は自殺をしてしまう。」
「そのレモン色の向日葵は、願いの叶う向日葵となるんだけど、誰も見つけられなかった。っていう話なんだ。」
「そんな伝説が、この町に・・・。けど、それって--」
そう。この話は、似ている。
今の俺と美喜に。
でも、俺は迷わず、一本向日葵を取って空を見た。
空は俺の心とは反対に、どこまでも青く澄みわたっていた。