ありがとう。






そう言った彼女は、私の手から自分の手を放して差し出された彼の手を掴むと、最後に私に言った。




「あなたの願いを向日葵に伝えなさい。」



そう言い終わると、彼を見て死の世界へと歩いた。




私はその背中に言った。




「ありがとうございました。」



彼女たちは、あの伝説の2人なのだろう。




彼女は私に自分の思いを伝えた。



きっと、彼に自分の思いを生きているうちに全て伝えられずに亡くなってしまったのだろう。




生きている間に伝えたかった言葉が残っているのだろう。




だから、私に伝えたんだ。







『美喜』



誰かが私を呼んでいる。





そうだ、この声は



私の愛するあなたの声






今、あなたに愛を伝えるよ






奏君








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