ありがとう。
《奏side》






『奏』



美喜に呼ばれた気がした。





目を閉じると、声が聞こえた。





『奏のこと愛してるよ。ずっと、永遠に。心から愛してるよ。』




俺も、同じ。




お前のこと愛してる。






その時だった。





コツコツ




人が多いのに静かな廊下に足音が響いた。




俺が病院に戻って来て何時間たったのだろう。




手術室のドアが開き、杉崎先生が出て来た。





「先生、美喜はっ!」



「美喜、助かったんですよね?!」





美喜、お前の気持ちちゃんと俺に伝わったよ。




俺は今、すっごい幸せだ。





「-ー-残念ながら」




だけどさ




「秋塚美喜さん、15時26分ご臨終です。」





やっぱり、お前がいなくなるのは嫌なんだよ。





幸せだけど、幸せだからこそ、凄く辛い。









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