ありがとう。
「---初恋だったんだ。」
奏君は遠くを見つめながら、懐かしそうに目を閉じた。
「モヤモヤ考えるのが嫌で、告白したらあいつも『奏のこと好き』って言ってくれた。
大好きで、なにも起こらずに、ただ幸せだった。
ーーけど、一年前の12月。
体育の途中で優がいきなり倒れたんだ。
保健室に行っても、救急車で病院に行ってからも、あいつは目を開けなかった。
そのまま、東京のでっかい病院で専門の医者の治療を受けることになった。
それから1週間後、優の母親から電話で目を開けたって聞いたんだ。」