溺愛マイヒーロー
「あ、あぶないよ~!」

「だーいじょぶだって」



あせるあたしを気にもとめず悠介はへらっと笑い、その犬へと手を伸ばした。

こちらの方がなぜか身構えてしまって、ぎゅっとジャグを握る手に力がこもる。

……だけど当の本人は、まったく気にする様子もなく両手で白い毛を撫でていて。



「うはは、ふわっふわ」

「ゆっ、悠介へーき……?!」

「平気平気。この犬、首輪してるし、きっと誰かに飼われてんだよ」



笑いながら完全に悠介はしゃがみこんで、犬とのふれあいに夢中になってしまっている。

……なんだか、ワンコ様の方も楽しそうで。

む、無邪気にたわむれてる……。まるで悠介も、大きな犬だ。



「わん!」

「うおっ、」

「あ」



悠介に撫でられぶんぶんとしっぽを振っていた犬は、なぜか突然彼の腕の中から抜け出していってしまった。

簡単には追いつけないようなスピードで、裏門の方へと駆けていく。



「なんだったんだーあの犬。どっから入ってきたんだろ?」

「あ……あはは……」



後ろ姿を目で追う悠介の言葉に、あたしは苦笑いして。

そこでようやく、持っていたジャグを地面におろした。
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