溺愛マイヒーロー
「……なー琴里」

「なによ?」

「ぱんつ見えてる」

「──はっ?!」



バッ、と勢いよくスカートを両手でおさえつけ、琴里は素早く後退りする。

一瞬で真っ赤になったその顔に笑いながら、俺はようやく身体を起こした。



「黄色のチェックー」

「なっ、なっ、あ、あんた……!」

「だーいじょぶだって、ちょっとしか見えなかったからー」

「しっ、しねっ!!」



そんなものすごい赤くて泣きそうな顔で暴言を吐かれたって、全然こわくない。黄色のチェックだし。

ああでも、俺的にはもーちょいセクシーなやつでもいいかなー。



「はやくオトナになろーね、琴里チャン」

「ううううるさいバカ悠介っ!」



ぽんぽんとそのちょうどいい高さの頭を叩く俺から、これまた勢いよくそっぽを向いて。

そのまま琴里はジャージに着替えるためか、再び校舎の方へとずんずん歩いていってしまった。



「……ぷっ、」



後ろ姿をしばらく見送り、そしていけないとは思いつつも……つい今しがたの彼女の表情を思い出すと、ひとりきりで立っていることも気にならず自然に笑えてきてしまう。

琴里はさっきみたいに、からかう俺にいつも真っ赤な顔でムキになって言い返してきて。

そういうところがおもしろいというか、かわいい。
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