溺愛マイヒーロー
「……まあ、アレだろ。恋をしている女はナントカ、ってやつだろな」

「……は?」



キャッチボールの準備のため、ミットをはめながらもヒロが発した意外な言葉に、思わずすっとんきょうな声がもれた。

……いや、いやいや。あの堅物ヒロの口から、『恋』って単語が飛び出したこと自体にも驚きだけど。

え、なに、まさか、琴里が?



「……俺、聞いてない」

「そりゃー、汐谷だっておまえに何でもかんでもベラベラ話すわけじゃねぇだろ」

「………」



なぜか動揺してしまっている俺とは裏腹に、あっさりと話すヒロの声音はいたっていつも通りだ。


……琴里に、すきなヤツ? 中学から一緒で、しっかり者で、顔を真っ赤にしてムキになるのがかわいくて、俺らのマネの琴里に?



「……なんだそれ、お父さんは許しません!!」

「は? バカか?」



なんでそーなるんだよ、と、ヒロが呆れたような表情で、至近距離にも関わらず少し強めにボールを寄越す。

え、なんでって、何が『なんで』?
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