溺愛マイヒーロー
「──だからね、あたし、日曜日行くことにしたんだ」



なるべく感情を表に出さないようにしながらも、あたしは一通り、昼間の出来事を話し終えた。

部活で使用する物品が置いてあるこの小屋には、あたしと辻くんの姿しかない。

今はカチャカチャとドリンク用のカップを片付ける音だけが、静かな室内に響いていた。



「……ふーん。まあ、汐谷が構わないなら別にいいと思うけど」



壁に背を預け、部活後のどこか気だるげな声で、辻くんはそう呟く。

だけどその後がしがしと頭をかきながら、「つーかさ、」とまた口を開いた。



「昨日のことは、気にしてないんだ?」

「……うん。きっとさ、悠介は自分が仲間外れにされたみたいに思ったんだよ。だから、機嫌が悪くなったんじゃない?」

「……そ」



小さくため息を吐いて、だけどそれ以上何も言わない彼に、あたしは心の中で感謝する。

これが彼なりのやさしさなんだということは、これまでの付き合いの中でわかっているつもりだったから。
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