溺愛マイヒーロー
「ゆー、すけ?」



ざり、と塀の壁についた手を無意識に握りしめていた俺に、かけられた声。

聞き覚えのあるそれに、ゆっくり振り向くと──少し驚いたような表情をした、琴里の姿。



「……びっくりした。まだ、帰ってなかったんだ?」



視線をさまよわせ、繕ったような笑顔で、彼女がそう話す。

……さっきまで、ヒロの前ではあんなに楽しそうに笑ってたくせに。

なんで俺の前では、ちゃんと笑ってくれない?


──今の俺は、どんな表情をしてる?
< 37 / 51 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop