溺愛マイヒーロー
「あのさ、」



悠介が口を開いて、あたしはまた彼に焦点を戻した。

やっぱり彼はどことなく落ち着かない様子で、自分のスパイクに視線を落としている。



「琴里あのさ、俺……ごめん、木曜日のこと」

「……別に、いいよ」



とっさに出た言葉は、思っていたより、ずっと低く小さく響いて。

自分がどんどん、悲しくなっていくのがわかる。


悠介とは同じ部活であたしはマネージャーで、だからこれから先気まずいから、とりあえず謝ってるんでしょ?

やめて、聞きたくない。そんな形だけの、うわべだけの謝罪なんて、いらない。

あたしは今、悠介の声を聞くだけでも、胸が苦しい。


……な、のに。



「ほんと、ごめん……」



なんで、悠介がそんなつらそうな顔してるの?
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