溺愛マイヒーロー
「ほんとバカ! 野球バカ! ……すきだバカ!」

「えっ?」



あたしのせりふを聞いた悠介が、パッ、と顔を上げる。

それとは逆に、あたしは顔をうつむかせた。



「バカ、……すきでもないのに、あんな、悲しくなるわけないじゃん……」

「……琴里……」

「……あたしのがずっと、悠介のことすきだったもん」



言葉が終わった直後、あたしのあごは長い指にすくわれて。

そのまま唇に、ちゅ、と軽い感触。



「……!!」

「琴里、顔真っ赤。やっぱかわいい」

「ッ、せ、せくはら……っ!」

「え、これだけで?」



くすくす笑う悠介は、密着していた身体をようやく離してあたしの頭を撫でた。

なんだかやっぱり、いつもと同じようにうまくまるめ込まれてると感じるのは、気のせいなんかじゃないと思う。



「よし、帰ろ。俺、家まで送ってくから」

「……うん」



けど、つながったままの、右手が。

昨日までとは違うことを、確かに証明していた。
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