可愛い生徒(カノジョ)の育て方
 そして推薦、ということは、少なからず高校の名前を背負って行く訳だ。

 今後の大学生活でもちゃんと授業を受けるという姿勢を見せられないような奴は、推薦に値しない。

 俺の考え方は、ベテランの先生方には受け入れられないだろうから内緒だ。彼らはとにかく自分の授業を真剣に聞かない奴を怒る。

 でも人生でどっちが大事なんだ?

 受験科目でもない、つまらない授業を聞かされるのと、少しの時間でも有効に受験勉強するのと。

 大事なのは、生徒の今後を見通すことだと俺は思っている。


 今日の3年5組の授業でも、政経の受験者と推薦の生徒以外の内職は黙認していた。

 夏休み明け、だんだんクラスの雰囲気が変わってきたのを感じる。

 文系クラスも遅ればせながら、受験体制に入っていったということか。

 机間指導しながら、政経受験者を念入りにチェックする。

 皆、真面目に受けているようだ。

 珍しく、安西もネタ帳を出さずにノートを取っていた。

 ……こいつ、真剣に授業聞いてるの初めてじゃないか?

 ちょっぴり嬉しくなった。
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