可愛い生徒(カノジョ)の育て方
「ふうん。じゃあ、それを最後にしばらくお前の妄想が読めなくなるのか。勉強に集中してくれるのは嬉しいけど、ちょっと寂しいな」

 すかさず安西がその言葉に飛びついてきた。

「先生、今、寂しいって言った!? やった~! 私の小説、認めてくれたんでしょ!? 
 何だかんだ言っても、先生は全作品読んでくれてる、貴重なファン様だもん」

「おう、何だかんだ言っても、今のところお前の小説より笑える小説に出会ったことがないからな」

 思い出すと、また笑えてくる。くすくす笑う俺に、安西はむきになって力説し始めた。

「だ~か~ら~! 私は『コメディ』じゃなく『恋愛』で勝負してるんだもん! どうしてそこを解ってもらえないかなぁ」

 ぷうっとふくれた顔をして、安西は俺に携帯小説のうんちくを語っている。

『乙女の萌えポイント』ねぇ。

『読まれるためにはちょっと刺激的な言葉を使う』とか。

『読者から反感を買われないために、天然で可愛いけれどそれを自覚していないキャラを主人公にすべし』なんていうことを、べらべらとまくし立てていた。

 そこまで考えて書くようになってきたってことは、そのうち人気も出るんじゃないのか?

 ……なんてことを言えば、また受験勉強どころじゃなくなりそうなので、黙っておくことにしよう。
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