可愛い生徒(カノジョ)の育て方
 今日の講習も、生徒は皆集中して聞いていた。

 あの安西でさえも、周りの雰囲気に流されたのか、珍しく真剣だった。


「おい、安西、早く帰れよ~」

 講義室にはもう、彼女しか残っていなかった。

「あ、今帰ります」

 テキストを覗き込むと、沢山の書き込みが見える。

「ようやくやる気になったみたいで、俺は嬉しいぞ」

「お陰様で……。だって、感想ノートに書かれたメッセージから『勉強しろ』っていう先生の声が聞こえてきちゃうんだもん」

 当然だ。解ってるじゃないか。

 わざわざ書き込んだ効果はあったな。 
 

「ところで先生、何であんなに教え方がうまいの? 私、高校受験のときの塾しか行った事ないけど、それに近い感じがするよ。他の先生と違って、授業の内容と講習の内容が明らかに違ってるもん」

 
 こいつ、意外と鋭いな。授業と講習は当然内容が違う。

 授業は学習指導要領に沿ったもので、講習は大学受験、特にセンターに標準を合わせているからな。

「知りたい?」

 またネタを提供すると、こいつ、勉強しなくなるかな?

 まあ、真面目に聞いていたからちょっぴり教えてやるか。
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