可愛い生徒(カノジョ)の育て方
「まず第一に、俺は今でもほぼ毎日勉強してるからな。
 この商売、採用試験に受かったらゴール、という訳ではないんだ。もちろん、採用試験自体もその年によって、かなり難しいけれど、そんなものの勉強は合格してからあまり使わない。
 だから、いかに自分の専門を磨く努力を続けるかが大事だと思うんだ」

 それをやらない教員が多すぎて、現場へ行ってから驚いた。

 俺が最初に採用されたのは、田舎の教育困難校だったから仕方がないのかと思ったが、この進学校でさえそうだった。

「採用試験って、そんなに大変なの?」

「倍率で言えば、3倍位の教科から、ありえない倍率の教科まである。ちなみに、俺が受けた年の高校公民の倍率は70倍を超えていた」

「な、70倍!?」

「そう、70倍。その年の採用試験で、一番倍率が高かったな。毎年社会科は高倍率なんだよ、みんな免許持ってるから記念受験する奴もいるし」

 俺の他に受かったのは、旧帝大の院卒が一人だけだった。
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