可愛い生徒(カノジョ)の育て方
 その時、俺の殺気が伝わったのか、安西が後ろを振り返った。

 げっ! という表情で、おそるおそる俺の顔を見る。

「安西! お前、政経で受験するんだろ? 受験科目の授業ぐらい真面目に受けろ」

「すみません……」

 そうだ、ついでに。

「講習のテキスト渡すから、後で社会科準備室に来なさい」

 小言のついでに、あの『俺様教員』の感想を聞かせてやるよ。

 安西はしゅううん、という音が聞こえそうなほど、小さくなっていた。

 何食わぬ顔をして、俺はまた授業を続けた。


 

「失礼します」

 放課後、素直に俺の縄張りへ現れた安西。

「まず、座れ」

 まだ、しぼんだ状態で座っている。

 ……そういえば、うちの犬もよく、いたずらが見つかって叱られた時、こんな調子で座ってたよな。

「これ、講習のテキストな。前回までに終わったところは答えを挟んであるから」

「あ、ありがとうございます」

 明らかにほっとした表情を浮かべている。もしかしたら早速説教されると思ったのか? まあ、小言は後で言わせてもらうが。
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