可愛い生徒(カノジョ)の育て方
 彼女の頭を、ちょっと大げさに撫でる。職員室の注目を集めるため、大きな声で。

「よく頑張ったな。よ~しよしよしよしよし!」

「……先生、私、犬じゃないんですけど」

「ハハハ。安西って何かうちの犬に似てるんだよな」

 すぐに表情が表に出てしまうところはそのままだった。はしゃぐところとか、叱られたらしゅううんとなるところが特に。

「先生って、犬飼ってたんですか?」

「昔、な。人懐っこくて、元気な犬だったぞ」

ハリーが死んで、もう6年が過ぎた。
 
「へ~。私に似てたなら可愛かったんでしょう?」

「おう! そりゃあもう可愛かったぞ~! オスだけど」

 安西が微妙な顔をした。

「まあそれはともかく、だ。これで3教科全部偏差値50超えただろ? トータルで56ならなかなかいい線いってるぞ」

「そうですか~? えへへ。これでも頑張りました!」

「そうかそうか! やっと安西の本気が見られるようになって、俺も嬉しい!」

「ホントですか? いや~先生のおかげですよ~」

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