可愛い生徒(カノジョ)の育て方
「悪い。待たせたな」

 おとなしく縄張りで待っていた安西に声をかけた。

「ねぇ先生、どうして講習見に来たんですか?」

「オフレコな。どれだけ酷い講習なのか、見たかったんだ」

「やっぱり、判ってたんだ。でも金曜日、うちの担任褒め称えてたけれど……?」

「ああでも言わないと、見せてもらえないんだよ。高校なんて、研究授業でもなきゃ授業すら見せないからな。
 特にああいうベテランの先生は、研究授業すらやらないで批判するばっかりだ」

 俺はいつでも授業公開に応じるつもりだし、研究授業もこの年にしては数をこなしている。

 全ては、授業の腕を上げるため、生徒のため。

「だから、うちの生徒なんていい頭持って入学してくるのに、進学実績が悪いんだよ。生徒に勉強しろっていう前に、自分がしろって話だ」

「それで先生は、うちの担任にどんな感想を言ったの?」

 心配しているのか、担任を?

 それとも、俺の立場を?
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