可愛い生徒(カノジョ)の育て方
「安西、まだネタ帳持ち歩いてんのか!?」

「当たり前ですよっ! 更新はできなくても、ネタは日ごろから集めておかなくちゃ」

「わかった。担任にバレないようにしとけよ。担任の幻想を壊すような真似はするな。
 その代わり、国語でも英語でも、わからなかったら俺に聞け。多分、俺のほうがちゃんと教えられるから」

「いいの? だって、先生も他の仕事がいっぱいあるのに」

「生徒の進路実現の手助けより大事な仕事なんてないさ。だから、頑張れ」

 安西が、俺を見上げて嬉しそうな顔をした。

「はい!」

 まっすぐに育ったのが良くわかる、子犬のような無邪気な瞳。

 安西はまだ、志望校の目標偏差値に届いていない。やっとD~C判定だ。

 今まで適当に勉強してきているから、受験勉強の仕方すらよく解っていない。

 ……こいつが受験に失敗する姿を見るのは嫌だ。

 とにかく、合格させてやりたい。

 今さら他の教員には任せておけないと思った。
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