可愛い生徒(カノジョ)の育て方
11月の閻魔帳
 人事調書を提出する時期になった。

 異動したての俺には関係ないが、校内人事との絡みもあるので、全員が一度は校長先生と面談することになっている。

 面談で、来年度は担任をしないか、と打診された。

 ……ついに来たか。

「大変有難いお話ですが、実は考えていることがありまして……」

 担任は引き受けられない理由を話すと、納得してくれた。

「応援するから、頑張れ」とまで言われた。理解のある管理職で助かった。

 言ってしまったからには、本気で勉強しなくては。



「安西、志望校、本当にここでいいのか?」

 いつものように、社会科準備室で「英語」を教えていた俺は、安西に聞いてみた。

「もちろん。お姉ちゃんもここの英文科だったし。私はここで国文学を勉強したいんです。でもって、できれば源氏物語とか枕草子なんかを研究しちゃったりして。ふふふっ」

古典が好きなのか。

確かに、携帯小説と平安時代の女流文学には、共通点があるような。
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