可愛い生徒(カノジョ)の育て方
「次のマーク模試が受験前最後の模試だけど、きっとまだ上がるぞ。なぁ……海を渡る気はないか?」

 北海道の私立大学で、これ以上はない。

 もったいないし、それに……。

 だが、安西は苦笑いしながら首を振った。

「無理だよ~。F女子なら頑張れば家から通える距離だけど、海を渡るってことは、一人暮らしでしょ? うち、まだ住宅ローンもたっぷり残ってて、そんなに余裕ないもん」
 
 そうか? かつての俺よりは絶対にいい条件が揃っているはずだが。

 ……保護者さえ説得できれば。

「金は何とかなるもんだよ。本当に必要な時の金はケチるな! という言葉もある」

「初めて聞いた格言だけど、誰の言葉?」

「俺。深いだろ?」

「……先生って、結構欲も深いよね」

 まあな。欲が深いからこそ、向上しようとする気力も生まれるのだと自己分析してるのだが。

「そう来たか。とにかく、考えてみたらどうだ?」

 偏差値60以上の大学のページを開いて、俺はいろんなことを考えていた。
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