可愛い生徒(カノジョ)の育て方
「お! ここなんて憧れるなぁ。やんごとなき血筋の方々が通われる大学だぞ。
 古典の資料も豊富だろうな。
 あぁ! ここもいいよな、キャンパスの立地条件がいいし、数々の文豪を輩出している」

 そして、目に留まったのがこの大学だった。

 ……京都なら、一緒だと。ちょっとした保護者のような感覚から。

「でも、俺ならここを選ぶかな? 京の都に住めて、龍安寺が目の前!
 毎日、観光名所観ながら通学できるし、古典好きにはたまらない場所だよな。
 ここ、面倒見のいい大学だから、就職支援もバッチリだぞ。しかも、試験はこっちで受けられる」

 F女子より魅力的な条件が沢山ある。

 安西も、一瞬顔を輝かせた。

 が……黙って、データ本を閉じてしまった。

 また、静かに首を横に振って。

 今度は、笑っていなかった。

「先生、夢を見せてくれるのは嬉しいけど、うちは無理なの。私はF女子に行くために勉強してきたんだから。
 私、そういう妄想はしないことにしてるの。だってこの妄想は、うちの家族を振り回しちゃうことになるもん」
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