可愛い生徒(カノジョ)の育て方
「それから、テキスト代請求してもいいか? 1260円なんだけど、今じゃなくてもいいから」

「それくらいなら、今払えますよ。ちょっと待っててくださいね」

 カバンから、赤い財布を取り出し、ちょうどあった~などと言いながら俺に渡す。

 俺の手に、一瞬指が触れた途端、びくっとして手を引っ込めた。

 ほんのり顔が赤くなっている。

「ははは。お前、今ちょっと意識しただろう」

 あんな小説を書く割に、なかなか純情な奴。

「え~、してませんよ!」

 嘘つけ。

「ふ~ん、ま、いいけどさ。小説の小ネタにしようとか思ってるだろう?」

「あ、このネタいいですね」

「まあ、ネタ探しもほどほどにしとけよ。じゃないと、来年は予備校の講師との恋愛ネタを探すことになるぞ」

「何ですか、それ」

「授業中ぐらい真面目に勉強しとかないと浪人するって事だろうが」

「……はい」

 またまた、しゅううんという効果音が聞こえそうな様子で小さくなっていたのが、ちょっと笑える。
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