可愛い生徒(カノジョ)の育て方
 それから。

 表向きの第一志望はF女子。

 本命はR大という、俺と安西の中での「志望大学変更」をした。

 この大学に合格するには、偏差値64は欲しいところだ。

 あと5ポイント。

 あと2ヶ月。

 高文連の大会も終わった今、やっと俺も縄張りにいられるようになったから、毎日安西の勉強を見ていた。

 もちろん、他の先生方には内緒だ。

『講習があてにならないから、私が三教科教えています』なんて、この年功序列の職員室では言えない。

 素直で従順な安西は、教えたことを確実に覚えていった。当然、家でも真剣に勉強しているんだろう。

 時々疲れた顔をしていたが、俺の前では絶対に弱音を吐かずに頑張っていた。

 自分も相当疲れているはずだが、いつも気配りを忘れない。


「先生、ごめんね。出来の悪い生徒抱え込んじゃって、お仕事する時間がなくなっちゃってるよね? でも、おかげで最近、すっごく解るようになってきてるんだよ!」
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