可愛い生徒(カノジョ)の育て方
 女子高生は守備範囲外のはずだった。

 早生まれの安西はまだ17歳、俺は29だ。

 6年前、初任の学校で生徒と仁義なき戦いの毎日を送っていた頃、彼女はまだランドセルを背負って小学校へ通っていた。

 ……犯罪、だよな。

 最初から下心があった訳ではない。懐かれて、ネタにされて、縄張りを荒らされて、めんどくさかった。

 それがいつしか、こいつのいい所しか目に入らなくなってしまった気がする。

 ……いや、もともと彼女は妄想癖のあるおバカだが、性格のいい子だ。


 初めて会った時から、きちんと気遣いができる生徒だと思った。

 素直に何でも吸収しようとする柔軟な性格、目標さえ決まれば、努力も厭わない。

 勉強も決して嫌々やっているわけではなさそうだ。何に対しても、自分なりの楽しみを見つけてこなそうとしている。

 彼女が今後、どこまで伸びるのか。大人になった安西がどうなるのか、見てみたいと思った。

 だから、京都を勧めた。


 大森先生が言っていた『予約』は、こういう時に有効なんだろうか?

 いや、ちゃんと卒業するまで、そんな『禁じ手』を使うことは、俺の性格が許さない。

 俺がこんなことを考えているなんて、全く想定外だろうな。

 真剣に長文読解に取り組む安西の横顔を見ながら、そう思った。
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