可愛い生徒(カノジョ)の育て方
「良かったな。この模試の結果を持って帰って、机の前に飾っとけ」

「どうして?」

「これ見たら、嬉しくなるだろ? 安西は褒められて伸びるタイプだからさ」

「ふふふ、分かります~? 先生って私のこと、何でもお見通しだ~」


 お見通し?

 さっきの戸惑った顔を思い浮かべた。


「……いや、そうでもない」


 安西は明らかに困惑していた。

 あのままもし、安西が俺と同じ気持ちになってしまっていたとしたら。

 もし、それを受け入れられるような積極的な女子だったとしたら。

 ……信用失墜行為に及んでいたかも知れない。


 危うく、安西の妄想小説と同じシチュエーションになるところだった。

 
「今日はもう、早く帰って休むといい。ご家族に早くそれを見せて、また褒めてもらったらやる気も出るだろ?」

「はい、そうします! 先生も早く自分のお仕事片付けて、姪っ子ちゃんのプレゼント選んでね!」

「そうだな。そろそろ注文しないと、クリスマスに間に合わないよな」


 今日は早く家に帰した方がいい、そう思った。
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