可愛い生徒(カノジョ)の育て方
 俺が当てると、してやったりの顔をしながらこう答えた。

「はい。みんな彼氏・彼女がいない寂しいクリスマスを過ごす仲間です。もちろん、先生も含めてです」

 さすが、俺のツボを心得てる。

「そうだよな~。俺も含めて、な。……って、余計なお世話だ! みんな、来年は楽しいクリスマスイブが過ごせるといいな。もちろん、俺も含めてだけどさ。
 そのために、今、頑張ろう。未来の自分のために、今できることを頑張れ!」

 来年のクリスマスイブ、果たして俺はどうしているのやら。少しだけ、期待もしているんだが。


 講習を終えて、社会科準備室へと急ぐ。

 多分、安西が寄るだろうと予想して。

 準備室前のドアで、鍵を開けようとしていたら。


「松本先生!」


 沖が後を追いかけてきていたらしい。

 とりあえず、用心のため準備室には入れず、廊下で対応することにした。

 こういう場合、生徒と密室で二人きりになることは、絶対に避けるべきだ。


 ……安西に沖との会話を聞かれる覚悟をするしかない。

 クリスマスイブに、望ましくない展開だな。

 案の定、階段の方から足音が聞こえた。
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