可愛い生徒(カノジョ)の育て方
「俺はさ、バカ正直だから、やっぱりダメなものはダメなんだ。内緒で付き合ったとして、それが誰にもバレなくても、自分の心には嘘をついてるだろ?
 俺は、みんなの前で教壇に立ったとき、恥ずかしくない教員でいたい。信用をなくすようなことはしたくないんだ」

 聞こえてるよな、安西。

 お前なら、きっと理解してくれると思う。

 俺の立場を、そして考えを。

 
 だが、沖はなおも食い下がる。

「それじゃあ、卒業してからだったらいいですか? 私が大学生なら問題ないんですよね!?」


 沖が大学生なら、安西も大学生だ。

 ……つまりは、そういうことだ。


「それまでに、俺に彼女ができるかも知れないぞ? もしかしたら、君に彼氏ができるかも知れないだろ? 仮定の話はしても仕方がない」


 俺の事は諦めろ、と言ったつもりだ。

『君』なんだよ。

『お前』とは呼べない間柄だ。

「でも……」と言いかけた沖に、俺は話し続けた。
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