可愛い生徒(カノジョ)の育て方
「とにかく、君の気持ちは嬉しいけれど、応えることはできない。俺なんか見返す位、いい大学に入っていい彼氏を見つけて欲しい。今は、受験勉強を頑張ってくれることが俺の願いだ」


 もう少し、優しい言い方があったかも知れない。

 もっと、傷つけずに済む方法があったかも知れない。

 だけどそれでは、後ろで聞いている安西が傷つく可能性がある。

 沖は、静かに頷いて、去っていった。

 気の強い彼女は最後まで涙を見せなかったが、俺に背を向けて階段を駆け降りてから、すすり泣く声が聞こえてきた。
 
 罪悪感と共に、油断した自分に腹が立った。

 よりによってこの時期にやってしまうとは。

 
 ため息をつきながらそっと階段を覗いてみると、隅っこでしゃがみこんでいる安西を見つけた。

「やっぱり、ここで盗み聞きしてたのか。趣味悪いぞ、お前。」

「ご、ごめんなさい!! でも、わざと聞いてたんじゃなくて、その、準備室に行こうとしたら道が塞がってて……出るに出られなくて……って、先生も聞かれてたの分かってたの? 趣味悪っ!!」
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