可愛い生徒(カノジョ)の育て方

 こうなるんじゃないかということは予想がついていた。

 もし、そうなった時は、俺が保護者を説得するつもりでいた。

 志望校を変更させたのは俺の責任。

 俺には安西のご両親を説得する義務がある。

 教員が受験生に対してできることはただ一つ。

 勉強に集中できるようにサポートすることだ。

 効率のよい勉強をするための講習、進路指導、そして保護者との話し合い。

 全ては、生徒のために。
 

 安西にすぐ返事を送った。

『直接話したい、携帯の番号を教えて』と。

 返事が来た。

 電話帳に登録してから、お袋に声をかける。

「ちょっと仕事で電話しなきゃならないから、外に出る」

「寒いじゃない? ここで掛けたら?」

 薫が叫ぶ。

「たけるく~ん、えほんよんで~」

「……この状態じゃ、まともに話せないんだよ。車に乗ってるからさ」

 外はマイナス10度以下。

 車のエンジンをかけても、すぐには暖まらない。

 けれど、早く安西の話が聞きたかった。

 
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