可愛い生徒(カノジョ)の育て方
 そして今。

 安西家のリビングには、ご両親、安西と俺が向かい合わせで座っている。

 対面キッチンではお姉さんがお茶を用意している。

 目の前には俺が持参付した資料。

 表面上は愛想良く迎えてくれたご両親だが……。

 漂う緊張感。

 俺の隣に座る安西から漂うのは恐怖感か? 可哀想に。

 お姉さんがひとり、柔らかい雰囲気でお茶を運んでくれた。

 安西にこっそりウインクをひとつして。

 最初に俺が口を開いた。


「年明け早々、このような話し合いの機会を快く設けて下さったこと、本当にありがとうございます。まずはご両親の話をお聞かせ願いたいのですが、よろしいでしょうか?」

 安西のお父さんが頷く。

「では、菫さんがR大学へ進学した場合、何が問題になりますか?」

 最初が肝心だ。

 まずは保護者の意見を聞いて、一緒に問題の解決法を探る。

 真面目そうなお父さんに、安西とよく似た、朗らかなお母さん。

 初対面で、担任ではないまだ若造の俺が現れても、愛想よく迎えてくれた。

 ここからが勝負だ。
 

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