可愛い生徒(カノジョ)の育て方
 今頃来るってことは……日本史・世界史から政経に受験科目を変更するのか?

 正直、ここの日本史・世界史の教員はやる気がないから、確かに政経を選ぶのは正解だ。

「ああ、いいよ。この紙に名前とクラスと志望校書いといて」

 紙を渡したが、どうやら筆記用具がなかったらしい。

「すみません、何か書くものを貸してください」

「OK、これでいいか?」

 俺が貸したのは、前任校の生徒からお土産にもらったシャープペンだった。

「ありがとうございます。このシャープ、可愛いですね」

 ちゃんとお礼が言えて、人を喜ばせようとする言葉をかけられる。さすが、地域で一番の進学校だけあって、生徒の質がいい。

 前任校は……やめておこう。素朴でやんちゃでいい奴らだったよな……。

「生徒からのお土産なんだ。俺には似合わないけど」

 そう答えると、女生徒がにっこりと笑った。そして必要事項を記入し終わると俺の顔をじっと見ている。

 ……なんとなく、嫌な予感がした。
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