可愛い生徒(カノジョ)の育て方
3月の閻魔帳
 3月1日。

 北海道の公立高校は、必ずこの日が卒業式と決まっている。

 いつもより早めに学校へ行き、式場の最終チェックをする。

 教員用の花をスーツにつけて、ぎりぎりに届いた祝電を掲示した。

 職員朝会が終わり、各担任が自分のクラスに向かう。


 式が始まった。

 教員席で拍手を送る。

 3年5組、入場。

 女子の出席番号トップの安西は、同じく一番の男子と一緒に並んで先頭を歩いている。

 安西も、俺を見ていた。


『厳粛な中にも盛大に』卒業式が終わった。

 3年の担任が、花束や色紙を抱えて職員室へ戻ってきた。

 卒業式後、恒例の卒業担任からのお礼の挨拶が終わり、式場の後片付けを終えたら休憩時間となる。

 俺は、社会科準備室へ。

 多分、あいつが来るだろうと思ったから。

 
 ここで安西を待つのも、もうこれで最後。

 最初はうっとおしかった彼女の存在が、いつの間にか構うと楽しい存在になり、ここへ来るのを待ちわびるようになっていた。

 だが、今日だけは、違った。
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