可愛い生徒(カノジョ)の育て方
 ノックの音。

「はい」

「失礼します」

 
いつもの、少し甲高くて甘い声が聞こえる。

 ドアを開けて、入ってきた。今日で見納めの制服姿。

 目の周りが赤い。

「いっぱい、泣いただろ?」

「……はい」

「この学校で良かったか?」

「はい!」

 ……俺も、ここの教員になれて良かったよ。
 
「何で、わざわざここに来たんだ?」

多分、来た理由はひとつ。

「先生に、今までのお礼が言いたかったんです」

 それだけな訳、ないよな。いつになく真剣な表情の安西が、ここにやってきた理由は、おそらく……。

「そうか。いや、こちらこそありがとう」

 ……それから、すまない。

 これからお前の事をひどく傷つけるだろうと思うと、胸が痛い。

 今までにない、硬い表情をした安西が、椅子に座る俺を見下ろすように近づいてきた。

 息を吸い込んで、彼女が言葉を紡ぎ出そうとした瞬間、制止した。

「それ以上、言うな」

「どうして……? どうして聞く前から言わせてもらえないの?」
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