可愛い生徒(カノジョ)の育て方
「俺がそんなヘマやらかすと思うか!? こんなことでもしなきゃ、もう会ってくれないと思ったんだ」

 とにかく会いたかったし、どうしても会う必要があった。
 
「そうだよ! こんな形で会いたくなかった! 何も言うなって帰しておいて、今度はこんな冗談。
 私は、先生のおもちゃじゃないんだもん! バカにしないで!
 私がどれだけ傷ついたか、先生にはわからないでしょう!?」

 泣きそうな顔をして、俺を睨んでいる。

 ……胸が痛い。

 きびすを返して、玄関へ向かうようなそぶりを見せた。

 でも、もう逃がさない。

 やっと、つかまえることができる。

 優しく彼女を腕の中に閉じ込めた。

 そっと、包みこむように。

 驚いて固まる安西の耳元に囁く。

「今日は4月1日。やっと、言える」

 一瞬、彼女の体がびくっと震えた。

「卒業、おめでとう」

「……今頃遅いよ、先生」

「またネタになるけどな……。卒業式が終わっても、学籍上は3月31日まで、卒業した学校の生徒だ。
 ……俺の、生徒だ。だから、今日まで言えなかった」

 少しだけ力を込めて、抱きしめる。
< 215 / 282 >

この作品をシェア

pagetop