可愛い生徒(カノジョ)の育て方
「先生、ありがとう」

 満面の笑みで、左手と携帯を見ている。

 彼女には1ヶ月もの間、辛い思いをさせてしまうことになったが、この日まで、ずっと我慢していて良かった。

「どういたしまして。遅くなって、悪かった」

「ううん。こんなに嬉しいエイプリルフールは初めてだよ」

 俺を見上げるようにして、感謝の言葉を伝える彼女が可愛らしい。

「そうだな、俺も……」

 もう、我慢しなくていい。

 素直にこうするのが、何よりも自然なことに思えた。

 さっき教えた通り、そっと目を閉じている。


 こんなに幸せなキスを、きっと一生忘れない。



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