可愛い生徒(カノジョ)の育て方
 新学期が始まり、今日から授業もスタートした。

 新3年生の政経の授業。初日だから、オリエンテーションだ。

「ここまでで、何か質問はないか?」

「せんせ~、彼女いるの?」

 ……お約束の質問が飛んできた。

 仕方がない、正直に答えてやるか。

「いる」

 そう答えた途端、教室がどよめく。

「どんな人なの~?」

「聞きたいか?」

 みんな、えらく乗り気だ。その位真剣に授業も聞いて欲しいものだが。

 つい最近まで、目の前の女生徒と同じ制服を来ていた菫を思い出す。

 妄想小説に没頭して、ちっとも勉強しない、落ちこぼれの受験生。

 俺からどんなにツッコまれても、くじけずに更なる妄想を繰り広げた、バイタリティ溢れる彼女。


『一番の読者は、先生だもん。小説を通して、先生と繋がっていたかったの。
 小説も、受験勉強も、先生の期待を裏切らないように頑張ったんだよ!!
 ……知らなかったでしょ?』
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