可愛い生徒(カノジョ)の育て方
「俺はここに赴任したばっかりだけど、前の学校には6年いたんだ」

「へぇ。どこにいたの?」

「田舎だよ。初任者は田舎に行くことが多いんだ」

「どうしてですか?」

 若手で異動の希望を言えない新採用は、田舎で修行すべし、みたいな風潮がある。

「ベテランの先生はなるべく都市部に残ろうとするからな」

 おかげで、人事交流が滞ってしまって、なかなか田舎から抜け出せない中堅の教員も多い。

 俺は運良くここへ赴任できたが、それもど田舎で6年辛抱したのと、運もあっただろう。

 安西は納得したような顔をして、聞いていた。

 そして慌てて手に持っていたネタ帳を開き、メモを取っている。

「若いうちに田舎を経験させて、ある程度経験を積んだら都市部の学校へっていう考えもあるな」

「ふーん……若い先生の多くは田舎で頑張ってる、と。だからうちの高校には若い先生が少ない、ということですか?」

「まあ、そうだな」
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