可愛い生徒(カノジョ)の育て方
 先生方はみんな、うーん、とうなって考えていた。

 うちの学校の場合、模試の成績はトップ10まで掲示している。

 総合ではランク外の生徒も、教科別なら名前が載ることがある。

 3年生の授業に行っていない先生は当然分かるはずもない。


 ……4組の渡辺ねぇ。

 ハンドボール部で、がっしりとした体つきの、いかにも体育会系な男子だ。あいつに、あの妄想炸裂の世界観が理解できるかどうか。

 ……多分、無理だ。

 だいたい、どこが良くて惚れたんだ?

 隣のクラスだということは、ろくに話したこともないだろう。見た目は確かに、愛嬌があって可愛いとは思うが、国語しかできないおバカだぞ。

 ……そんなこと、隣のクラスじゃ知るわけないか。

 悪いことは言わない、お互い受験生だし諦めた方がいいぞ。

「大森先生、もしかしたら、安西菫じゃないですか? 帰宅部で、国語だけが偏差値65超えてますけど」

 二人の受験勉強の妨げにならないように、俺は大森先生に教えてやろうと思った。

「ああ~、安西ね! あいつ、数学では1取ったんですよね。理系はできなくても、文系が得意な奴だったんだ!」
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