可愛い生徒(カノジョ)の育て方
『練習をする前に、先生が

「お腹がすいたでしょう。一緒に食べようね」

 と言って、パンと牛乳とフルーツを出してくれた』



 ……一人暮らしの男の冷蔵庫に、フルーツが入っている確率ははたして何%だろう。

 俺の冷蔵庫には今、

 食パン・バター・梅干・ウーロン茶・ビール・いざというときのための熱さましの座薬

 この程度しか入ってないぞ。まさか執事だのメイドだのがいる訳じゃないよな?

 ……まずい。ここで『執事』なんていう単語が思い浮かんでいるあたり、俺も相当安西の妄想に毒されているんじゃないか!?

 

『食べ終わってから、先生に案内されてピアノの部屋に入った。防音室になっていて、部屋にはグランドピアノとコンポだけが置いてある。

「さあ、もう一度はじめから通して弾いてみて」

 先生が私のすぐ横に座って、譜めくりをしてくれようとする。

 ただでさえ上手く弾けないのに、緊張してますます弾けなくなる』
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