可愛い生徒(カノジョ)の育て方
 かろうじて民宿が手配できたのだが、そこは民宿というより、どこかの家にみんなで居候しているような状態だった。

「兄ちゃん、俺の肉食うなよ」

 ……隣に座る、この民宿の親父に言われた。

 誰が他人の皿の肉を盗るかって。

 内心ムッとしながらも、一応立場があるのでさらっと笑顔で流したというのに。

「兄ちゃん、いい男だなぁ。こりゃ相当女泣かせてるだろう。ええ? 何人と……」


 まあ、教員になる前はそれなりに……って。

 生徒の前でそんな話ができるかっ!

 田舎の生徒はそういう話が大好きだ。

 田舎の親父もそういう話が大好きだ。

 落ち着いて飯も食えない民宿で3日間は辛かった。


 それはともかく。今の3年生には申し訳ないが、来年は全国へ行けるように指導してやりたい。再来年は……。

 
 引率が終わり、職員朝会で大会の結果を報告。結果が良くても悪くても、ねぎらいの拍手を送るのが慣例。

 そしていつもの学校生活へ戻り、俺が居なかった分の自習プリントに目を通す。
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