可愛い生徒(カノジョ)の育て方
「事務には確実に届け出をしないと、保険証がなくなるぞ。届けを出した時点で、教員・生徒共に大問題だろうな」

「そうなんだ……。今度はいいと思ったんだけどな」

 がっくり肩を落として、しぼんだ安西を見ると、ちょっと可哀想に思えてくる。

 高校生なりに考えて、何とか面白い設定にしようと努力しているのは解るが、現実はそんなに甘くない。

「あと、ちゃんと届けないと、所得税・住民税の控除も受けられずに、余計な税金を納めることになる」

 年末調整にも関わる問題だ。

「あり得ないけど、楽しめそうな話にはなるかもな。入籍して妻になってるならまぁ、あれやこれやも問題ないんだろうけど」

 ちょっと、男のロマン、だよな。

 ……ん? 俺も妄想小説の世界に相当毒されてきたか!?

「でしょう!? いいと思ったのになぁ」

「まぁ、現実は厳しいんだよ」

 またしてもネタ帳に何やら書き込んでいた安西に、自習のプリントを返してやったら、ものすごく驚いていた。

 どうやら、思いついたらとにかく何かに書きたくなる習性があるらしく、無意識のうちに書いていたそうだ。

 ……勉強も無意識のうちにしてくれたら……無理な話か。
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