可愛い生徒(カノジョ)の育て方
 やっと生徒が帰り、校舎の点検を全て終わると、もう9時過ぎ。

 職員室での店屋物も既に1週間以上続いてしまい、いい加減飽きてきた。誘いを断り、今日は家に帰ることにする。

 ……家でコンビニ弁当でも食べるとするか。

 こんな時、誰かが家で帰りを待っていてくれる人がうらやましい。

 誰もいない真っ暗な家に入り、空っぽに近い冷蔵庫を開けるのは、虚しい。

「おかえりなさい」の言葉をかけてもらえる人は幸せだ。

 誰かに言ってもらいたかった。

 俺もそろそろ、彼女が欲しいお年頃だよなぁ……。そんなことを考えながら、温めた弁当を食べる。

 報道番組を相手に、とりそぼろ弁当を口に突っ込み、ビールで流し込む。

 相変わらず、暗いニュースばかりでますます辛気臭い気分になるな。

 こんな時こそ、笑えるものを。

 今、一番笑えるとすれば、間違いなく安西の妄想小説だ。

 弁当を食べ終わった俺は、携帯を開いてブックマークしているいつものサイトを見た。

 お、新作を書いているらしいな。
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