可愛い生徒(カノジョ)の育て方
『あたしが顔を上げると、そこにはスーツを着たイケメンが立っていた。

「どうした? 迷子か?」

あたしはほっとして泣いてしまった』


 ……それくらいで高校生が泣くなよ。5歳の甥でも泣かなかったぞ、ネズミの国で迷子になった時。あの時は親の方が泣きそうになってたっけ……。

 それにしても、イケメンって便利な言葉だな。そう書いただけで、大抵の読者は自分好みの男を妄想できる。


『泣いている私の顔を見て、そのイケメンは

「入学式早々そんな顔すんなよ。お前の名前は?」

 と、聞いてきた。

「斉藤 綾香です」と答えたら。

「綾香ね……俺は、近藤 遼平。1年A組担任で教科は体育」

「え……私、A組です!」』


 おいおい、学担がこんなところで油売ってんなよ……。入学式だぞ、仕事しろ!  しかもすぐに女生徒のファーストネームを呼ぶな!


 
 『あたしの担任だというそのイケメン先生は、私の顔をじっと見て……。

「お前、けっこう可愛い顔してんだな。泣き顔も可愛いけど、そんな顔してたら入学式に出られないぞ。早く泣き止めよ」

 と言って、涙をふいてくれた。

 それから突然

「そんな顔されたら、理性が持たね~よ。いいか、絶対ナイショだからな! 涙が止まるおまじない」

 といって、あたしにキスしてきたの……

 びっくりしているあたしをぎゅっと抱きしめて、

「俺、マジでお前の事好きかも。俺以外の男に惚れないように、今のうちにツバつけとくからな!」

 と言って、またあたしにキス……』
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