可愛い生徒(カノジョ)の育て方
「なのに、自分の事しか考えなかったバカな中3のガキは、『俺の進学はどうなる?』って、親父に詰め寄って叫んだ。余計なストレスを与えて、親父の身も心もボロボロにするとも気づかずに……。
 それからすぐに癌で逝ってしまった。謝ることもできなかった。
 残ったのは、このカメラと、親父に対する後悔だけ。最低な息子だったよ」

 黙って聞いていた安西が、初めて口を開いた。


「ううん、大事なものが他にも残ってる。先生のお父さん、そのカメラを使ってもらえて、天国で喜んでます。
 お父さんが最後に撮ってからもう13年以上経つのに、まだみんなの笑顔が沢山撮られてるんだもの。
 生きているうちに見せてあげられなかったのは残念だけれど、きっとお父さんは先生の今の姿を見て、喜んでると思うんです。
 先生が生徒の笑った顔を沢山残していること、きっと見守ってくれていると思うな」

 明るい口調と対照的に、声が震えている。

 振り返ると、涙を流して俺を見つめる安西がすぐ近くにいた.
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