胸に刻んで
「俺もさ、片想い中なんだよね。
相談のってくんね?」
丸められたら教科書で軽く頭を叩かれる。
叩かれたところを押さえながらしぶしぶ後ろに顔を向けた。
「……へえ。緑川も好きな子とかいるんだ」
「おっ!相談のってくれるん?」
「話聞くだけなら。なんかおもしろそうだし」
恋バナ楽しいよね。
緑川の恋、興味あるかも。
緑川が窓に視線をやったので私もつられて窓に目を向けた。
完全に2人の姿は私の視界に映らない。
聞こえるのは声だけ。
笑い声。
あぁ、巧平のあの笑顔が姫ちゃんに向けられているんだね。
見てもないのに安易に想像がつく。
「俺さぁ……野々山のことが好きなんだよね」